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合唱をはじめたのは、大学を卒業する半年ほど前のこと。それ以来、いくつかの合唱団で、合計20年以上も歌ってきましたが、いつも、練習の最初の『発声練習』というのが苦手でした。あの、音階に沿って「アアアアア」みたいな無意味な母音を連ねる例のやつです。

たしかに、プールに飛びこむ前の準備体操みたいなもので、いきなり歌いまくったら喉がおかしくなるという理屈は分かるのですが、音型としても言葉としても、まったく無味乾燥。退屈至極な15分間(くらい?)であり続けました。

ところが、この「アンサンブル・ハイブリッジ」に加わって以来、発声練習が、積極的な意味を持つならず、面白いんですね。これは、発生指導家としての高橋先生の力量のなせる技だと思います。人数が少ないこともあって、ひとりひとりの声が聞こえます。先生も個人単位に「そこ、もうちょっと口を開けて」とか「両脇を締めて声の幅をせばめて」という風に見てくださる。

とくに、母音のつくり方の練習が丁寧な点が、高橋メソッドの特徴ではないでしょうか。最近はわりとずっと「イ」から「イェ」の母音の練習が続いています。わたしはずっと「イ」の母音が苦手だったのですが、さすがにようやく、鼻腔への響かせ方がちょっと分かってきた感じがします。そうすると、楽になるのですね。

声の質は一人ひとり違っても、母音の響かせ方とかが共通だと、そこにハーモニーが生まれやすい気がします。こういう練習のできるところが、ハイブリッジのいいところかな、と最近は思っています。


体ほぐしの「高橋式体操」の中話を前回書きましたが、中でも一番かわっているのは、両手を体のまわりに旋回させるねじり運動かもしれません。これ、文字ではすごく説明しにくいのですが、まっすぐに立って、体を右回り、左回りにねじる運動です。ただし、力を入れてねじってはいけません。両手は、何も力を入れずにだらんとしておきます。そして、腰を軽く左右にひねります。腰の動きについてくる感じで、上半身がねじれ、さらに両手が遠心力で、ぶうんと回ります。上半身の力をすべて抜かないと、柔らかくは回せません。

この動きは、体の軸を確かめるには格好のエクササイズです。いつだったか、フィギュアの国際大会で、出番を待っている浅田真央ちゃんをカメラがとらえていましたが、彼女も上半身をちょっと揺すりながら、待っていました。解説者が「ああやって体の軸を確かめているんですね」という。へえ、って感じでした。

歌を歌うとき、猫背になったり、背骨が左右どちらかに傾いていたりしたら、変なところに力が入って、うまくまっすぐな声が出ません。そういう意味の、準備体操かな、と理解しています。

ところで先週のことだったか、たまたまテレビで、指揮者の西本智美さんが、アイドルグループのSMAPに、指揮の指導をするという、ちょっとバラエティー的な番組をやっていました。SMAPのメンバーが、本物のオケを前に、それもサントリーホールで短い曲を指揮するのです。指揮者って、見ているだけだとカッコいいし、誰にでもできそうに思えます。ところが、実際に素人がやっているところを見ると、とんでもない。あれはとても身体的な技巧を要求されるのですね。

SMAPの中で一番上手だったのは木村拓哉で、彼はベートーベンの7番の第1楽章を、それなりに振っていました。しかし、3人くらいはメロメロで、とくにリズムがどんどん乱れていくのです。SMAPは一応全員、歌手でダンサーでもあるはずです。だから、せめてテンポとリズムくらいは守れるかと思いきや、そうはならなかった。見ていると、体の軸がどんどん崩れていくのです。そうなると、腕だけではリズムは引っ張れません。西本さんの指揮者姿は、もちろんとてもカッコいいのですが、彼女は見事なくらい、体の軸がブレないんですね。音大の作曲科出身だとききましたが、昔はバレーを習っていたのだとか。うーん、やっぱりね、と一人で納得したのでした。